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「無料相談」を上手に活用するコツ

 

 中長期在留外国人の人数が増え、新しい在留資格が創設されるに伴って「多文化共生」「多言語サポート」といったキーワードを目にする機会が格段に増えたように感じます。このような動きの前から出入国在留管理庁(=入管)をはじめ、各関係省庁、各自治体窓口、弁護士会、行政書士会では外国人無料相談窓口を設けたり、各士業事務所で無料相談を受け付けたりしており、このような地道な努力が注目を集めることで相談先情報を必要とするより多くの方に届くことはとても嬉しいことです。その一方で、このような無料相談窓口に寄せられる相談の中には「無料相談」の範囲を超えてしまっているケース、時間的な制約がある等、専門家の力を借りないと間に合わないと思われるケースも散見されます。

 

そこで本日は「無料相談」でできること、どのようなご相談に対してどのようなご案内をしているかをほんの少しご紹介します。「無料相談」の特性を知って上手に活用していただき、不安やお悩みから解放された明るい日々を取り戻していただければと思います。

 

 


 

 

1.「無料相談窓口」の種類と特徴

 

中長期在留者の方にとって最も関りがある在留資格に関する相談や生活相談は下記で受け付けています。日本語の他、外国語でもできます。相談方法や対応可能言語はそれぞれ異なっているので事前に確認しておくとよいでしょう。

  • 入管インフォメーションセンター
  • 外国人総合相談支援センター
  • 外国人技能実習機構

ここでは一般的な情報提供やご質問に回答してもらえます。相談内容によってはより適した他の窓口を紹介してもらうこともできます。

 

 例1:在留カードをなくしました。どうすればいいですか?

 ⇒ まず警察に行って、在留カードをなくしてしまった証明書をもらってください。

 

 例2:会社をクビになりました。仕事を探したいです。

 ⇒ 近くのハローワークでお仕事を探すことができます。

 

  • 各自治体の相談窓口 

ここでは転入・転出、国民健康保険等のように各担当窓口の専門事項に関する相談を受け付ける方式が主流のようです。外国語対応の可否、外国人専用相談窓口の有無はそれぞれ異なっているのでお住いの自治体に問い合わせてみるとよいと思います。

 

⇒問題のごく初期に、これからどうすればよいか、どのようなステップで何を準備すればよいのか、自分でできるものか否かの判断に迷っている場合にまずこのような公的機関にコンタクトし、正しい方向性を示してもらうとよいでしょう。

 

  • 各自治体の国際交流協会

「多文化共生」機運の高まりとともに、多言語による生活相談、法律相談、労働相談等に応じるところが増えてきました。相談員さん自身が外国の方である場合も多く、気軽におしゃべりを楽しむ感覚で何でも相談できる点がとても好評のようです。一般的な情報提供の他、他機関の紹介他機関/他部署との通訳をしてもらえることも多く、お住いの自治体の国際交流協会・国際交流センターでどのようなサービスが受けられるか確認しておくとよいでしょう。

 

  • NPO、ボランティア団体

医療、国際交流、学生支援等各NPO団体の活動に応じて外国語で相談ができます。個別状況に寄り添った傾聴相談内容によっては他団体と連携して解決まで伴走するところもあるようです。初回相談は無料ですが継続的に利用する場合は若干の費用がかかったりするところもあるようなので事前によく確認するとよいでしょう。

 

⇒状況が複雑、事態が悪化、金銭的な問題がある場合には上記のような国際交流協会、NPOやボランティア団体にコンタクトするとよいと思います。

 

  •  士業団体

士業専門分野内での一般的な情報提供を受けることができます。弁護士会、行政書士会内に無料相談窓口を設けている場合は、曜日や時間を確認したうえで随時相談可能です。また、市役所・区役所に定期的に専門家が派遣されたり各自治体のイベント(市民・区民まつり等)の時にブースを出す「無料相談会」のスタイルもあります。時間的に余裕がある場合等はとてもお得に専門家のアドバイスをもらえます。

 

 

2.個人士業事務所、士業法人の「無料相談」と公的機関や団体の「無料相談」は違うの?

 

上記1.の機関や団体と比べると、より民間事業者マインドが感じられる場合があるかもしれません。無料相談を利用したからといって必ず依頼しないといけない訳ではありませんが、依頼につなげることを目的としていることが多いということを念頭に相談するくらいの感覚でいるとよいでしょう。一般的な情報に加えて手続き上のノウハウをほんの少し開示してくれる場合もあるので、お得感を感じやすいこともあるでしょう。

 

依頼にあたっては、希望に沿ったサービスを提供しているかどうか(相談のみは可能か、相談の結果その後の書類作成だけ依頼できるか等)専門性、報酬額の他、個人情報を預けるほどに信頼できる専門家であるかどうかも選択基準にするとよいでしょう。最初から専門家に依頼することを考えているケース、ご自身が直接関わっていく時間をとることが難しい場合は効率よく問題解決に向かうことができます

 

 

3.「無料相談」活用のコツ

 

  1. 特徴を知る
  2. できることの限界を知る
  3. 多少の報酬を支払って専門家の力を借りることが必要なケースもある

 

 

以上3点を知っておくと効率よく問題解決に向かうことができます。そのためにも、平時からお住いの市区町村窓口、国際交流協会・国際交流センター等でこまめに公的な情報を入手しておくとよいでしょう。

 

また、言葉の壁があると感じる場合は、多言語対応可能な窓口や多言語サポート情報も入手しておくとよいでしょう。

 

無料相談窓口の広がりとともに、質の向上も今後の課題となってきます。相談者様がスムーズに必要なサポートを得られるような多言語対応の拡充、特に多言語対応可能な士業専門家を増やしていくこと、士業団体と自治体・NPO団体等との連携がポイントの一つであると考えます。このような分野でこそ既存の領域を超えたイノベーティブなアイディアが期待されるところです。

 

以上のような「無料相談」の特徴を知り、上手に活用していただくことで正しい情報が正しく届き、安全・安心な在留の一助となれればとても嬉しく思います。